横浜紅葉坂日本酒 ふじひら × 横浜君嶋屋
横浜君嶋屋
横浜店主任 日本酒担当
織本 博文(おりもと ひろふみ)
横浜店主任 日本酒担当
織本 博文(おりもと ひろふみ)
「横浜紅葉坂日本酒 ふじひら」
店 主
藤平 大輔(ふじひら だいすけ)
店 主
藤平 大輔(ふじひら だいすけ)
「横浜紅葉坂 日本酒 ふじひら」
店 主
藤平 大輔(ふじひら だいすけ)
×
横浜君嶋屋
横浜店主任 日本酒担当
織本 博文(おりもと ひろふみ)
「横浜紅葉坂日本酒 ふじひら」
店主 藤平大輔
~お二人が日本酒にこだわりを持たれたきっかけを教えてください。
<藤平>
元々は懐石料理屋に居たのですが、実は30歳を過ぎるまでは日本酒というものをほぼ飲んだ事がなかったんですよ(笑)。
和食畑にいながら日本酒の事が分かっていない事が如何なものかと思い、少しずつ勉強するようになりました。
料理長専任の時は、コースの献立と食材の原価率などを考えていれば良かったのですが、
ドリンク全般の発注を担当するようになり、そこで「お客様が求めているものは何か」「料理と合わせるにはどうしたら良いか」といった事を学ぶなかで、日本酒への興味がより深まっていきました。そんな時、「銀座に能登の玄関口をつくろう」というコンセプトで立ち上げた店の店長と料理長を任されたのですが、 能登の事には疎い横浜市民だったので、分からないなら行くしかないと。この時期どういう食材があってどんなお酒が合うのかなど、現場に行き漁師の方達に教えて頂いたり…農家や酒蔵にも伺いました。東京からわざわざ、能登の若い世代の人はもう作らないような料理を教わりに行くので珍しがられて、地元のおばあちゃんたちも嬉しそうに色々教えて下さったんです。
ブリがあったりカニがあったり能登はどちらかというと冬の食材が豊富。逆に、夏場はアユなど商業ベースには乗らない食材が多く、焼き物は何にしたらいいのだろう?といった細かな事をいろいろな方に相談させて頂き、食材探しにも皆さんが協力してくれるようになって・・・そんなご縁が今でも続いています。
<織本>
跡を継いで実家の酒屋をやっていたのですが、結果的に店が無くなってしまい、君嶋屋に入り7年目になります。
最初は、漠然と色んな日本酒を飲んでいるという感じでしたが、とある蔵元さんに伺った際、その蔵で造られたお酒しか置いていないお寿司屋さんに連れて行って頂いたんです。このお酒にはこれという、いわば料理とのマリアージュですね。このときに、ただ食べて飲むのではなく、食材とお酒の一対一の世界を知りました。1+1が2ではなく、3にも4にもなるという事を身をもって実感したのです。それからは自宅にお酒を持ち寄って食べ物と合わせたりして、日本酒と食というものにはまっていき、現在に至っています。
横浜君嶋屋
横浜店主任 日本酒担当 織本博文
季節の料理1品づつに日本酒1種類がついてくる「日本酒ペアリングコース」が人気
<藤平>
初めは地方の酒販店さんとお取引していたのですが、取り寄せが6本ずつという縛りがネックでした。君嶋屋さんだったら店舗で欲しい1本を買えるし、5千円以上で2本から配達してもらえるという小回りの良さと品揃えの豊富さ、それに、私の好きなお酒がほとんど揃っていたのです。日本酒にこだわる店はだいたい「時間内に〇種類が飲み放題!」というのが主流ですが、僕は、飲み放題では出せないようなお酒をコースで使いたいと思っていました。 刺身にはこれ、ブリしゃぶにはこれ、のどぐろの塩焼きはこれ・・・と、量は少ないのですが美味しい料理と美味しいお酒を合わせてコースを組めないかなと考えていたんです。洋食屋さんでいうワインでのペアリングコースを日本酒でも、という事ですね。全国の旬の食材を扱う中で、日本中のお酒を置いている君嶋屋さんの力をお借りできたらいいかなと思いまして、自分一人ではまかないきれない所を織本さんにしっかりサポートして頂いています。
<織本>
はい、よく宿題をいただきますね(笑)。藤平さんが選んだ食材に対してお酒を組み立てていくんですけど、できるだけ毎月蔵が被らないようにとか、色々気をつけています。
<藤平>
毎月毎月、献立を織本さんにメールで送っているんですが、見事にそれに合うお酒をドンピシャで当てるわけですよ。
食べていないのに字面だけでいいものを持ってくるとは、お酒を扱っているプロってやっぱり凄いなと思いますね。
<織本>
食べた事がない料理を合わせるのは結構苦労しますね。お料理は魚や肉、発酵させているものだったりと色々ですが、まず、蔵の立地がどういう場所にあるかというのを頭に入れて、そこから答えを導きだしているという所はありますね。
<藤平>
「鴨鍋」と「凱陣」なんかはピタっとはまりましたね。
<織本>
そう言って頂けるとすごく嬉しいです。それはもう、ど真ん中にボールが来たのであとはフルスイングすればいいといった感じでした。
<藤平>
「ホタルイカの干物を酒粕の味噌床に漬け込んだ料理」と合わせたのが「十旭日」ですよ。これも鉄板でしたね。そういう料理は織本さんも口にされた事が無いと思うんですよ。私も自分自身が初めてやってみたんですから。肉でも魚でもやるのですが、酒粕と味噌の合わせた床に、干したホタルイカが手に入ったので、それを酒で浸して酒粕の床に漬けて一晩おくと酒粕と味噌の味が入り、味噌の床にもイカの味が付いて、その両方をちょびちょびなめながら十旭日の燗をつけたのをくいっとやるとダラダラずっと飲めてしまうのですよ。 これはもう流石だな、織本さんと思いましたね。
<織本>
自分の中でイメージを膨らませて、お酒の味は頭の中に入っているので、パズルの組み合わせですよね。それが正解だったと聞けてよかったです。
<藤平>
うちの料理を召し上がった事がなかったにも関わらず、ピタっと。店ではみんな「ハズレがないよな」と感心しています。
他にも「アサリと春キャベツの酒蒸し」に「瀧自慢 辛口純米」もいいですよ。僕も知らなかったので調べると、伊勢志摩サミットの時にここの蔵が使われたなんて情報が出てくるので、そのままお客さまに伝えています。
今まで知らなかったお酒も教えて頂いているという感じです。
<織本>
ありがとうございます。いい意味でのプレッシャーで、今後も外せないですね。空振りしたらえらい事になるかと・・・それが怖いところでもあります(笑)。
1人でも入りやすいカウンター席で、会話をしながら旬の料理と日本酒を楽しめる。
夏
茄子田楽
秋
鮎の有馬煮
冬
鴨鍋 焼きネギと牛蒡 柚胡椒
春
白エビのバラ天 椎茸とししとう
「横浜紅葉坂日本酒 ふじひら」
店主 藤平大輔
店主 藤平大輔
<藤平>
とにかく旬のものを食べて頂くのが一番と思ってます。毎月コースを考える時に、まず旬の野菜や魚などをノートに書き出すんです。
例えばメインで、6月であればアユの塩焼きはマストで入れたいというのがあれば、その前後が決まっていきます。
あとは季節のものとは矛盾するようですが、発酵というものに対する文化が面白いなと思っていまして、日本酒もその発酵食品の中の一つなんですね。高温多湿の日本は条件が揃っていて、味噌も醤油も発酵食品ですし。日本酒との相性がいいものを考えていく上で発酵食品をどう使っていくかなというのも自分の中では大事な事です。だから揚げ物や焼き物と同様に珍味みたいな項目も一つ入れるようにしていて、最初はスッキリきれいなお酒からはじまり、最後は旨みがしっかりと感じられる「長珍」みたいなものでコースを組んでいます。
<織本>
お酒をおすすめする側としては、食べて飲んだ後にもう少し他の物を食べたくなるような次の食を誘うようなお酒を念頭に入れていますね。とある蔵元さんは「自分のお酒の出来は80点でいいんだ、食材と合わせる事で120点、140点を目指している」と仰ってました。その辺が日本酒と料理の面白さですね。
あと、先ほども触れましたが、蔵元さんがどういう立地にあるのかというのもひとつ気にしている所です。海の方に近いのか山の方にあるのか、おのずと地元に根付いた食文化がそこのあるはずなので、海の方であれば海の食材が、山の方であれば発酵食品や肉系の食材が見えてくるかなと。
<藤平>
織本さんのチョイスには多分こういう意図があるのだろうと想像していくと、お客様に説明するときのストーリーができるんです。
うちのコースのいい所がちゃんとピックアップがされているので、自分で選ばなくても良く、組み合わせの理由が納得できるとより楽しくなる。
次の日誰かに言いたくなるような、そんな事が楽しいのかなと。
<織本>
「これとこれの組み合わせがすごく良かった!」という情報が広がっていくのもいいですよね。
<藤平>
「二日酔いになるよ」とか、日本酒っていろいろな誤解があると思うんですよね。ワインは好きだけど日本酒は苦手という方もいますが、その誤解が解けていくのが嬉しくて、そういう方達に、より日本酒を楽しんでもらえればいいなという気持ちで取り組んでいます。
<織本>
僕たちの世代は日本酒には嫌な思い出がありますからね。それを考えると、この30年で日本酒は飛躍的に美味しくなり、各蔵元さんでもすごく底上げができていますよね。
みなとみらい周辺に勤める20代の若手の方から地元の年配の方まで幅広い層が通う店。
蔵元を招いた日本酒イベントなども開催している。
<藤平>
元々二人でやってる店ですが、有難いことに忙しくなる日が増えてくると、料理やお酒に対する説明になかなか時間をさけなくなります。売り上げが上がるのと矛盾して、お客様の満足度が下がるのでは意味がないので、新しくバイトを採用してトレーニングをしています。明日も、実はお店は休みなのですが、今月のペアリングについて、君嶋屋さんはじめ酒販店さんのホームページを見てまとめておいでと宿題を出してあります。みんなで試食しながらお酒を飲んで感じた事を発表してもらうんです。
極端な話、別にうまい言葉で説明しなくても、「私これ好きです!」でもいいんです。説明する力が付くと、お客様にもより楽しんでもらえるかなという想いで、
バイトの学生さんたちと一緒に店全体のレベルの底上げをやっています。カップルで来て見つめあっている人に「山田錦が…」なんて、割り込んだりしませんけど(笑)。少なくともうちのコースを召し上がって下さるお客様は、日本酒とお料理に興味がある方だと信じていますので「空気見ながら行っておいで」と言っています。
<織本>
人を育てるというのはとても大事な事ですよね。今まで興味のなかった人を育て上げる事によって、その人が育った時にまた、下の世代に伝えていく事で広がっていくので、藤平さんはとても素晴らしい試みをされていらっしゃると思います。
君嶋屋にも若い世代が入ってきていますけど、やはり根はお酒が好きな人が集まってきますし、その好きからどのように知識を持ってお客さまに伝えていくのかが重要。それまで中身の美味しさだけだったものを、お客様に伝えていくにはその周りにあるあらゆるものが必要になってきます。どの人がどういう気持ちで造っているのか、蔵の背景がどうなのかなど・・・僕もさまざまな事をできる限り伝えていきたいと思っています。
<藤平>
とにかく、偏見なく日本酒を楽しんでもらえればいいかなと思っています。一緒に楽しみましょうという感じですね。詳しいお客様からいろいろ教えてもらう事もあって、「俺の地元のこのお酒はね・・・」など、語ってくださったりするときは、思わずその場でメモを取りますね(笑)。次に来られた時に、そのお酒を持って来て下さったり・・・などうれしい出会いもたくさんあります。肩ひじ張って難しい料理をやるよりも一緒に楽しくやれる方がいいですよね。
<織本>
藤平さんのお客様でうちにお酒を買いに来られる方も結構いらして、そこでまた繋がりができて、すごく楽しいですね。
<藤平>
この辺では、お酒なら君嶋屋さんに行けばあるよ!みたいな事も言っていますよ。分からなかったら、織本さんという人を捕まえてって(笑)。
旬の料理と日本酒が生み出すペアリングの妙味を存分に楽しめる。
お忙しい中貴重なお話をありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。