酒のおはなし No.027 [2021.4.8]
「飲まさる」器
2017年から君嶋屋に勤めて、この春で4年目になります。
お酒に一通りハマってみて、これからはゆったり楽しみたいフェーズに移行していると感じる今日この頃です。
心地よさは酒器に左右される
今まではお酒の流行りに乗ったり、色々と買い漁ったりして家にたくさんお酒がある状態が好きだったのですが(オタク感もあるし)、最近は「豊かさとはどういう状態か」と考えることが多いので、きっとその影響が出ているのでしょう。お酒との豊かな生活を送るためには自分自身がどうお酒に向き合いたいか、日々模索することが大切なのだと思います。
現時点でのわたしの答えは、「心地よさを感じられるのが良い関係なのかな」。
快適な状態でお酒を飲みたい。心身ともに健康な状態でお酒を迎えたい。
そしてお酒を飲む心地よさは、意外と酒器に左右されると思うのです。
これまで酒器をいただくことも飲食店で酒器と出会うこともそれなりにあって、お酒を注ぐ器ひとつで心地よさが変わるんだと実感しました。
「飲まさる」とは・・
器の中には、「飲まさる」酒器ってあるんですよね。
「飲まさる」とは、北海道や東北地方の方言で、自分の意志とは関係なくたくさん飲んでしまうこと。
わたしが酒器を意識するようになったきっかけは、2018年のNEXT FIVEで「へうげもの」という漫画作品とコラボしたお酒を買ったこと。そのお酒は色んな作家さんの酒器がシークレットで付いてくる商品だったのですが、出会った酒器がとても「飲まさる」酒器で。
あたたかみのあるザラザラとした肌で、どっしりしていて適度に日本酒がたくさん入る。
この器を作った人は酒飲みのことを分かっているな、と感動したのを覚えています。
そしてその器を使う心地よさを知っているからこそ、晩酌にその器を選ぶことが自ずと多くなり、楽しい夜を過ごすことが増えました。
お気に入りの器との出会いは伴侶と同じくらい難しい
酒器として売られているものでも、なんだか自分にはしっくりこないものが多々あります。
例えば、
- 材質が冷たく、飲むときに体温が奪われる感じがしてなんだか飲み進まない
- 飲み口が厚くてお酒が口内に流れ込みづらい
- 1度に入る量が少ないので何度も注がなくてはならず、だんだん醒めてしまう
- 形状が持ちづらい、置きづらい
こういう器は、たとえ見た目が気に入っているものでも出番が少なく、戸棚の奥の方へ追いやられてしまいます。
お気に入りの器と出会うのはものすごく難しいと感じます。
見た目も好みで「飲まさる」力がある器に出会う確率は、それこそ伴侶と出会うくらいの確率なのではないかと思うくらい、探しても見つからないものです。
諦めず、地道にアンテナを張りつつ、日々を送るしかないですね。
美しい器と出会った!!
最近はサラサラした白く美しい酒器をお迎えしました。
曲げたワイヤーで少しずつ削る手法でつけた独特の凹凸も良いし、器を持ったときの手の曲がり方のナチュラルさが心地よい。
人間工学に基づいたんですか?と言ってしまうような持ちやすさで、酔いが進んでも自然に盃を口に進めることができます。
ヘリが薄いのと、猪口自体が軽いので軽快な冷酒を飲むときに重宝しています。
片口もお揃いで購入しました。
片口があると、ゆるゆる変わっていくお酒の表情を楽しめるのでオススメです。
これからもゆるりと、「飲まさる」器でお酒を楽しんでいこう。
街に出たときは、また魅力的な器と出会えることを楽しみにしながら。
三浦 まなみ [株式会社横浜君嶋屋 銀座店 和酒担当]
東京医科歯科大学大学院卒業後、横浜君嶋屋入社。2017ミス日本酒 岩手代表。
SAKE diploma、ソムリエ、国際唎酒師取得。
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