酒のおはなし No.011 [2019.7.18]
美味しいお酒を伝えること
横浜君嶋屋は1892年に創業した酒屋で、今の社長の君嶋は4代目の当主です。創業から100年ほどたった1997年にワインの輸入を始めました。主にフランスワインで、産地や生産者の知名度などに関わらず、蔵を直接訪ね、君嶋が本当に美味しいと感じたワインをセレクトして輸入しています。現在、フランス産だけでも40生産者程と取引をしています。私は営業部に所属していて、ホテルやレストラン、居酒屋といった業態のお客様にそういったワインを販売しています。洋食だけでなく、和食、中華、エスニックといった様々なジャンルのお店のソムリエさんや責任者の方に対して、色々な条件の中でワインを提案し、採用してもらえた時は感慨一入です。
中途採用で入社した私は、はじめ自社の輸入したワインについて、ほとんど良くわからない状態でスタートしましたが、生産者への訪問や生産者来日などを通して、土地やワイン造りだけでなく生産者の人となりも知り、今では強い愛着を持っています。最近は、何かを伝えるためには、土地やワインを知ってることはもちろん大事ですが、一番大切なのはこの愛着や愛情のようなものだと思っています。40以上の蔵の中でも、特に愛着があるのはコルシカ島の生産者でアントワーヌ・アレナという生産者です。一般的に、コルシカ島がどこの国の島なのか、どこにあるのかすらもままならないようなエリアの、あまり聞いたことのない生産者なのですが、実はスゴい生産者なんです。
現当主のアントワーヌ・アレナは1970年代にコルシカのワイン産業が衰退していく中で家業を継ぎ、大変な努力の末に(荒地や石灰質の岩山を自ら削り、畑を開墾していくための急斜面の作業は大変な重労働で、重機などで岩を砕いて畑に撒く作業などは困難を極めます。)多くの同業関係者、シェフ、ソムリエから尊敬を集めています。私がアントワーヌと会ったときに感じたのは、威圧的ではないけれども滲み出るカリスマ性や無理のない距離感を保ちながら、常に周囲の人を気遣うような優しさを持ち合わせている部分でした。
実際にコルシカ島に行くと、日差しは強く気温も高いのですが、カラッとした乾いた風が気持ちの良い地中海特有の気候です。そんな中を少し歩くとカフェのテラスで地元の人たちや観光客がその土地のワインを美味しそうに飲んでいます。特にロゼワインが人気で、中でも、アントワーヌのロゼワインはいつも売り切れでした。
ワインを提案するとき、そういう部分を特に伝えていきたいと思っています。日本酒や焼酎についても同じで、お酒の価値は味わいだけでは表すことのできないものだと思います。これからもアントワーヌ・アレナやコルシカワインをはじめ、本当に美味しいお酒を伝える仕事を楽しみたいと思います。
[横浜店] 営業部 久保田
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