酒のおはなし No.008 [2019.4.16]

サヴィニー収穫の一日


皆様、こんにちは。銀座店店長の神村です。2013年の銀座店オープンから君嶋屋にお世話になっております。以前は空を飛んでおりました。第二の人生を歩もうと会社を辞めたのが2010年。 その決断をしたのが、サヴィニーで心の洗濯をした2009年の初秋。ほぼ一か月のリフレッシュ休暇を貰い、サヴィニーに嫁いだビーズ・千砂ちゃんの家に居候させてもらい、家事手伝いをしながら収穫の時期を満喫させてもらいました。

サヴィニー・レ・ボーヌ、ワイン好きな方は良くご存じと思います。 ブルゴーニュの中心地、ボーヌの中心から4.5キロの所にある、コート・ド・ボーヌ地方の北に位置する村です。

もうかれこれ20年以上前、アカデミー・デュ・ヴァンに通い始めた私、ソムリエの資格を取りたくて通い始めたのですが、良き先生や友達に恵まれ、すっかりワインの虜となりました。 そのアカデミー・デュ・ヴァンの同級生である伊藤千砂ちゃんがサヴィニーの名門の造り手であるシモン・ビーズに嫁いだのが1998年。時折、ちょこっとお邪魔させて頂いていましたが、収穫の時期にお邪魔したのはこれが初めてでした。
収穫時期にお邪魔すると、その活気ある光景に感動を覚え、そんな中産まれてきたワインは更に愛おしく、バッカスからの贈り物を頂ける悦びも倍増します。 今回は、そんな私が覗き見させて頂いた収穫のとある一日をご紹介したいと思います。

サヴィニー収穫の一日

収穫の朝は早いです。7時くらいから続々と収穫に参加する方々が集まってきます。収穫隊は昔から参加しているご近所の方々(不動産屋の社長さんとかもいらっしゃるのです。)、パリからの学生、その他様々な方々がいらっしゃいます。日本人の研修生も多いのがやはりビーズの特徴でしょうか。(ちなみに、労働なので、ビザが必要です)

「おはよう」の挨拶をしながら、用意されたコーヒーを飲み出発!
畑に着くと摘み手と摘んだ葡萄を入れる大きなカゴ(パニエ)を背負いその葡萄を車まで運ぶポーター(こちらの方が重労働なので賃金が少し高いらしい)に分かれます。摘み手の作業も中腰での作業は重労働です。特に畑によっては急斜面を登りながらの作業。みんなのペースがありますから、たらたらしている人は「クビ!!!」としかられます。(シモン・ビーズでは「クビ」という言葉が共通語♪ダメな人、ダメな葡萄、邪魔な物は全て「クビ!!!」(^^;;;))

サヴィニー収穫の一日

そんな収穫を二時間ほど行った収穫隊が楽しみにしている第一のご褒美。 『カス クルート』畑での朝ごはんです。コーヒー、ジュース、フランスパン、サラミやハム、チーズ、チョコレートなどが並び、おのおの好きな物を挟んでパクパク!
英気を養い、再びチョキチョキ!!! お昼ご飯目指して頑張ります。

お昼は、ドメーヌに戻り皆で頂きます。毎年、キッチンを仕切るシェフとそのキッチン隊が出動。 美味しいお昼がでるワイナリーには、良い人財が集まるとか。なので、シェフも気合が入ります♪ ちなみに今はブルゴーニュ在住の日本人のシェフ。千砂ちゃん最愛の夫であり、前ご当主のパトリックが亡くなる2013年以前は、千砂ちゃんがキッチン隊の指揮を執り、キッチン隊の隊長さんに指示を与えていました。何しろ、このキッチン隊の働きが収穫隊の士気を高める素となるのです!

そして、午後再び畑へ。 そのあとは、終わりまで休みなしでひたすら切る。 収穫は体力勝負!!!です。
私が収穫時に何度かお邪魔した時は、ラッキーな事に良い天候に恵まれた日々が多く、葡萄の出来も良い年だったのですが、寒い年や葡萄の出来が悪い年などは、収穫も厳しい物となります。
それだけに、あまり評価が高くない年と言われているワインには、収穫隊や蔵の人達の、汗と涙が詰まっているのよねぇ、とより愛おしく思えるのです。 蔵の中では、蔵の中で別のドラマが繰り広げられます。
家事手伝いをしながらの一か月、収穫隊を支えるキッチン隊の仕事も少し手伝わせて頂いたのですが この話は一言では語れません。この経験で私は「せっかくの人生、そろそろお空から降りようかな」と思ったのです。そのお話は、又次回に!!

à bientôt


神村彰子 [横浜君嶋屋 銀座君嶋屋店長] 
日本航空客室乗務員を経て、横浜君嶋屋勤務 JSA認定シニアソムリエ


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